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『アレント入門』

思想家、ハンナ・アレントの生涯は波乱万丈であり活動や著作は多様である。

ドイツでの学生時代にハイデガーとの恋愛、ゲシュタポに逮捕され、ビザなしでフランスに亡命する。フランスでは敵性外国人として収容施設に収容される。そしてアメリアに亡命しユダヤ人問題についての論説者として活躍する。イェルサレムでアイヒマンの裁判を傍聴し、雑誌『ニューヨーカー』に公開した記事が論争を呼び、ユダヤ人から激しい非難をあびる。

アレントが一番衝撃をうけたのは、ドイツの良心的な人々が、ナチスのイデオロギーに幻想を抱き、道徳規範が崩壊したことだった。しかもナチス体制が崩壊したあと、もとの道徳規範にあっけなく戻ったという。

本書はこの道徳規範の崩壊をアレントが解き明かす部分にスポットをあてている。

ドイツの人々はナチスと共犯関係を結び、殺戮計画に加担してしまう。しかし、そのなかでも判断をあやまらず、ナチスに抵抗した少数の人々がいたという。

なぜ彼らは良心を失わずに、思考停止せずに自分の正義をつらぬけたのか。

アレントはその理由をソクラテスまでさかのぼり、自分のなかのもう一人の自分という概念で説明する。さらに道徳規範が崩壊しないための道徳原理をカントを援用しながら考察する。第4章でアレントの道徳原理のエッセンスが整理されている。

アレントは様々なレイヤーから全体主義が浸透するメカニズムを解き明かす。「孤独、孤絶、孤立」という分類、「私的な領域、社会、公的領域」の区別によるマルクス批判など、アレントの考察は鋭く、鮮やかである。

ポピュリズム全盛の今、まるで現在の状況を指摘しているのではと思うほど、リアルに読めた一冊だった。

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