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『人類と建築の歴史』

通常の建築史というとピラミッドから始まる。
本書は異色の建築史で、記述の中心はピラミッドよりはるか前、旧石器時代と新石器時代である。本全体の9割がこの時代の暮らしぶりや宗教観を解説している。藤森さんのこの2つの時代への愛着や思い入れが伝わってくる。

旧石器時代は250万年前の時代である。氷河期で冬になると氷と雪に閉ざされていた。人類は植物の根を掘り、木の実を拾い、草の種を集め、虫を食べて、動物を狩猟して生活していた。

すでに芸術は誕生しており、洞穴の絵画や女性像が発掘されている。人間の安産や狩りの成功を祈った地母信仰である。

打製石器では木を伐りだすことができないため、住居は細い枝を集めて、地面に差しかけ、上に草、樹、動物の皮をかけた一時的な家だった。

1万年ほど前に氷河期がおわり、地球は温かくなる。
植物と動物は増えて、人類の生活も安定し、暇な時間が増える。磨製石器と土器がうまれる。
新石器時代の到来である。

磨製石器は木を伐り倒し、好みの長さに伐り、穴を開けたり、くりぬいたりなどの加工ができるようになった。当時作られた木の道具が残っている。

新石器時代から人類は農業を始めている。農業は野生の植物の生育を手助けしているときに、女性が発見したのではと藤森さんは推測している。

お母さんは、野生の植物の生育を手助けしている時、植物の種から芽がでて葉を伸ばし、花を咲かせ、やがて実が結ぶ、そういう過程を、とりわけ自分が妊娠している時の自分の胎内の子の動きと合わせて、お父さんにはとても出来ないほどことこまやかに観察し、理解していた。植物の気持ちになることが出来た。いってしまえば、植物に入り込んで内在的に理解していた。

人類は磨製石器によって森を伐り倒し、田畑の拡大に向かう。
生活が安定し、人口が増える。そして定住するようになる。こうして家が誕生する。

屋根をメンテナンスすれば、30年くらいは持ち、当時の人の一生分は軽くもつようになった。
安定した家は、人の自己確認作業を強化する働きをする。

狩りが終わると獲物をもって決まった家に帰る。(中略)峠の上から村の光景を望んだ時の気持ちを想像してみよう。自分が修学旅行や夏休みの休暇で長期に家を空けて時のことを思い出してください。
(中略)
久しぶりに見た家が昔と同じだったことで、今の自分が昔の自分と同じことを、昔の自分が今の自分まで続いていることを、確認したのではあるまいか。自分はずっと自分である。
人間は自分というものの時間的な連続性を、建物や集落の光景で無意識のうちに確認しているのではないか。

農業から太陽の動きの重要さが認識され、太陽信仰が誕生する。当時つくられた巨石を立ち上げた施設が世界に残っている。この太陽信仰は大きく高い外観をもたらす。そして旧石器時代から続く地母信仰はやさしく包み込むような内部空間表現を建物にもたらした。2つの神を意識した建物を「建築」と呼び、建築の起源としている。

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