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独立を考えているWebデザイナーのための、フリーランスになって気がついたこと、学んだこと

記事公開日:2011年07月02日

Webデザイナーになった後 フリーランス 雑記

独学でWebデザイナーを目指している方で、将来はフリーランスになって独立を考えているかたもいらっしゃる方もいらっしゃるとおもいます。以下、実際にフリーランスを考えている方、躊躇している方へのメモです。

会社や組織のありがたみ

独立してスタートして売上がそれほどない状態だと、最初は営業や経理の役割を一人でこなします。見込み客の開拓、打ち合わせ、提案書、見積書、請求書、会計ソフトへの入力(仕訳→総勘定元帳への転記)作業などです。取り急ぎ紹介だけでも食える人でも、長くやるには顧客の開拓が必要になります。見込み客の開拓はまず自分の存在をしってもらうことです。具体的には、役に立つブログを書く、プラグインの配布、無料Webサービスなどの施策をおこないます。

デザイナーの人はこのあたりの分野が苦手な人が多いです。会社員の一員でデザイナーをやっているとこのあたりの面倒なことは、ディレクター、営業、経理の人がやってくれます。つまり、自分が制作に集中できるように周りの人がお膳立てをしてくれてたわけです。フリーランスになると仕事を定期的にとることの大変さもわかります。フリーランスになってみてようやくありがたみに気づきます。会社員時代のときは、経理や営業の人たちが嫌いでした。

若いときは組織やチームが苦手でした。自分は何でもできると勘違いしていました。いまも私は基本"一匹オオカミ"の性格ですがずいぶん丸くなった。人を気遣うようにもなりました。組織に対してポジティブな考えにかわりました。誰でも得意、不得意があるものです。営業もできて、デザインもできて、プログラミングもできて、経理もできる人なら、組織にはいらず一人で仕事ができます。私も含めて多くの人はそうではないです。なにかしら欠点をもっています。様々な専門家が集まり、その欠点をうめて、弱みを消すのが組織なのです。

いま私は、形態は個人事業主で業務委託なのですが、実質、組織の一員として動いています。いわゆる客先常駐と呼ばれるもので、独立とはいえないものです。チームに営業、デザイナーがいるので、営業、デザイン作業から完全に解放されました。

ただ最低限の経理作業だけは残っています。月末の委託先への請求書作成、日々の会計ソフトへの入力、社会保険の支払い、確定申告などは自分でやっています。ただこれも、会計事務所の記帳代行サービスをつかえば、確定申告までやってくれます。売上が安定している方はそういうサービスをつかいましょう。月ごとの顧問料と確定申告代がかかります。

独立すると実際にどういう実務が必要かは『クリエイターのための独立ガイド』がムック形式で読むやすくイメージがつかめます。この本は小規模デザイン事務所の開業方法を例に事務所の物件選びから採用方法、経理、営業など体系的にまとまっています。休刊になってしまった雑誌『デザインの現場』の独立特集の10年分の記事をまとめたものです。運転資金も含めて具体的な開業費用が必要かもわかります。運転資金は最低半年分の生活費と必要経費分が必要でしょう。

類書ですと『フリーのデザイナーになる。そのノウハウと7人のエピソード』も参考になります。大日本タイポ組合、古平正義、居山浩二、針谷建二郎、名久井直子、上田亮、各クリエイターへの独立前、独立後に関するロングインタビューが収録されています。独立のきっかけ、仕事の取り方、姿勢などが学べます。


規則正しい生活の重要さ

フリー→時間が自由→昼夜逆転というイメージがあるしょう。長くフリーをされている方にきくと、毎日決まった時間に起きて、机にむかって仕事をしている人が多いです。

フリーランスでもっとも怖いのが病気になって仕事ができなくなることです。いま私は組織にはいますが業務委託なので、健康保険は国民健康保険だけです。入院になったときの生活保障はありません。正社員だと、病気になって長く休む場合、健康保険の生活保障があります。傷病手当金といいます。倒産した場合やクビになった場合も、失業保険があります。しかも正社員の場合、これらの保険料を半分会社が負担してくれています。

ドトールコーヒー名誉会長 鳥羽博道さんに学ぶ万が一のための生活費の用意

独立する前にやってほしいことはたくさんありますが、その中でも重要なのは生活費を用意することです。先ほどもかいたように正社員と違い、病気になって長期の入院になった場合の生活保障は一切ありません。仕事が突然なくなった場合の、失業保険もないです。こういう現実なので、自分で半年から2年くらいまでの生活費を自分で用意しておく必要があります。

まず自分が最低生活できる生活費を計算します。保険、家賃、光熱費、食費、交通費、通信費、本代を計算し、1ヶ月の大まかな生活費を計算します。それに、6〜24をかけた数字が生活防衛資金となります。私の場合は、1年分の生活費をネット銀行の解約可能な定期預金にいれています。これでも不安な人は2年分がベストです。

Webデザイナーのみなさんは鳥羽博道さんをご存知でしょうか?ドトールコーヒーの創業者です。氏の自伝『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』の中で1998年に日本経済の恐慌を感じて社員2年分の給与を払える態勢を整えたというエピソードがでてきます。2年という数字に根拠はないですが、2年間あれば何かを立て直すのには十分な期間です。話はそれますがこの本で、ジャーマンドックを200円で売ることの難しさをしりました。

この生活費は本当に万が一のときのためのセーフティネットになります。本当は国が個人ベースではいれる失業保険があればいいのですが。

夢の在宅ワークは失敗におわった

2年ほど自宅を仕事場にしてWeb制作をしていた時期があります。打ち合わせは近所のスタバをつかっていました。人にもよると思いますが、私には"夢の在宅ワーク"はだんだんと地獄になってきました。プログラムのコードを書いて、布団にはいってもコードが頭の中で動いています。気になって眠れず、起きてパソコンの電源をつけます...。プロジェクトでもめているときに、家族に電話をきかれるのもつらかった。際限なく仕事ができるのも、良いことばかりではありません。私の場合はオーバーワークになり、昼夜逆転してしまい体のリズムを崩しました。

SOHOオフィスという選択肢

名刺が自宅というの気が引けます。名刺は見込み客も含めて手裏剣のように配るものです。自宅とは別に事務所があると対外的な信用度も違います。フリーなって事務所用の住所があることのありがたみを感じました。事務所は大きな固定費です。独立してから長く続けるコツは固定費をなるべくローコスト体質にすることです。売上が厳しい時期がかならずきます。事務所をもつ場合も、普通の賃貸オフィスではなく、事務所をシェア、SOHOオフィス(値段はピンキリ)、六本木ライブラリのような有料実習室を借りる方法があります。SOHOオフィスの場合、住所や電話がつかえます。

知人が属しているWeb制作会社は埼玉のMioオフィスというところを借りています。Mioオフィスは埼玉の浦和を中心にSOHOオフィスサービスをやっています。プランにもよりますが、3万円台から借りれます。個室タイプでも6万円台です。ただ都内の一等地だと、SOHOオフィスはもう少し高くなります。本当に集中できる作業場所でよいのなら、埼玉などの郊外はオフィスをもちたい人には狙いめです。

フリーランスのための社会保険

フリーなって会社にしない場合は、個人事業主です。この場合の社会保険は、国民健康保険、国民年金です。この二つは強制です。あと個人の任意で、小規模企業共済、国民年金基金、確定拠出年金にはいれます。

小規模企業共済はすぐにはいるようにします。できれば開業届け、青色申告、小規模企業共済の加入は同時期にやっておきます。これは自営業者のための退職金の積み立て制度です。毎月最高7万円まで自分の退職金を積み立てることができます。加入期間が長いほど、退職金控除が大きくなり実際に積立金をもらうときの税金が安くなります。無理のない金額で毎月積み立てることをおすすめします。積み立てたお金は全額、所得控除されます。年間で最大84万円の所得税控除をうけられます。小規模企業共済は、フリーになる前に中小企業基盤整備機構のサイトからあらかじめ資料請求するとよいでしょう。申し込み窓口は金融機関です。

国民年金基金は私は加入していませんが、月6,8000円まで掛金を払うことが可能です。こちらも全額所得控除されます。終身でもらえる個人年金です。

確定拠出年金は証券会社や銀行が窓口の個人年金制度です。小規模企業共済や国民年金基金と最大の違いは自分で運用先の比率を決めるところです。小規模企業共済や国民年金基金は掛け金を払うだけで、実際の掛け金の資産運用はポートフォリオマネージャーがおこない、内外に分散して投資されます。具体的にはポートフォリオマネージャーが株や債券を分散してかうわけです。

確定拠出年金はこの資産運用の比率を自分で自己責任で指図するのです(リスク資産だけでなく元本保証の選択も可能です)。あと終身ではもらえません。金額が確定していなく、もらえる額は運用成績次第です。確定拠出年金も全額所得控除されます。
国民年金基金と確定拠出年金は両方を組みわせて、月6,8000円まで加入ができます。

現在のところわたしは、任意の社会保険は小規模企業共済だけの加入です。正直、このまま行くと老後の生活がまずいです。国民年金基金と確定拠出年金も十分に調べましたが、いろいろな理由で加入を控えています。別な機会があればこのあたりの年金問題もかきたいテーマです。またこのあたりの情報は法改正がありますので、執筆時点での情報になっています。あらかじめご了承ください。

フリーランスから組織に戻ることは可能です

最後にフリーランスになるかどうか迷っている人にアドバイスです。失敗しても会社に戻ることは可能です。よく勇気がありますねと勘違いされます。あたかもフリーになったらもう"かたぎの道"に戻れないのではと心配される方がいらっしゃいます。むしろ、実績やスキル次第ではよい条件で戻れるとおもいます。とくに新規でたちあげた会社だと経験者や元フリーは歓迎されます。

知人のWebデザイナーで元フリーランスで制作会社のディレクター職で戻った方を何人も知っています。また、私のように正社員で戻らず業務委託として会社と契約して、組織に戻る道もあります。

ただ組織に戻るときにどうしても敗北とか失敗とみられてしまいます。会社員のかたはフリーランスに偏見をもっている方も多いです。面接にいくと面接官から好奇心の目でみられます。フリーランスに変な幻想をもっている方がおおいです。これはじっと我慢です。戻ってから成果をだして認識をかえてもらうしかないです。

今回のエントリーでかいたように実際にフリーランスになって一人であれこれやってみると、組織の良さに気がつきます。最初は自分でいろいろ勉強しますので、営業、経理などの仕事もわかります。20代の私は本当に生意気でした。いまは営業、経理、役員のかたを敵視することはなくなり、概ね尊重できるようになりました。夢の在宅ワークは失敗におわりましたが、これもよい経験です。仕事が半年以上なく、きつい時期もありました。でもこれも良い経験です。フリーランス、自分の力試しにやってみてはいかがでしょうか?

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