まったくのゼロから、デザインを独学する方法
作成日:2011年09月08日(木)
まず、タイポグラフィからはじめよう
デザインの勉強はまずどこからはじめるとよいだろうか。
一番のおススメは、タイポグラフィだ。なぜなら、最低限、文字のみでデザインをつくることが出来るからだ。
とくに学ぶべきなのは、文字組みだろう。文字を組む時に、和文書体と欧文書体を混ぜてくむ。和文書体は、仮想ボディに対して、めいいっぱいまで大きい書体と、小さめの書体がある。それを見極めて、サイズやベースライン、文字間のスペーシングの調整をしてゆく。これを錯視調整といい、ロゴをつくるときにも役に立つ技術である。
なので、単に文字の打ちっぱなしは論外である。名刺をもらうと、いつもそのデザイナーの文字組みをみる。とくに錯視調整はされているか、をみる。錯視調整がされた文字組は緊張感があって美しい。文字の組み方をみれば、その人のデザインへの意識がわかる。
タイポグラフィは、10年前くらいは良い入門書や情報がほとんどなく、この分野の独学は難しかった。でも実務をすればするほど、基礎から文字を勉強したくなる。デザイナーで新宿の朗文堂の塾に通った人はいるとおもう。幸い、いまは出版点数が多いとはいえないが、独学できる良書がある。とくに、ここ数年で良書が揃った印象がある。
まず『タイポグラフィの基本ルール』、『タイポグラフィ』(これはデザインの現場の特集記事をまとめたもの、工藤強勝さんの事務所でスタッフの教育用でつくっている書体見本帳がみれる)を、最初の入り口としておすすめしたい。
欧文書体だと、『欧文組版』、ライノタイプ社のタイポディレクターが書いた『欧文書体』、『欧文書体2』が定番である。
和文書体は、まずは『文字の組み方』。読み物だと、『タイポグラフィ・タイプフェイスの現在』がおもしろい。特に、小塚ゴシックや新ゴで有名な小塚昌彦さんの話は勉強になる。また、田中一光さんのように習字をならうのも、有効な学習法だ。
レイアウト、平面構成について
一冊目としては『デザインの教室 手を動かして学ぶデザイントレーニング』がわかりやすい。揃える、グループ化するなどの平面構成の基本技法を学ぶことができる。デザインの入門書としても無難におススメできる。
応用だと、『魅せるデザイン、語るレイアウト。』がロジカルでおもしろい。エディトリアルデザイン(雑誌のデザイン)の有名制作会社がつくった本だが、ここまで過剰にロジカルに分析して、レイアウトを組むのかと驚くだろう。
よくデザイナーで最初から"がちがち"にグリッドをひく人がいるが、これはやめたほうがよい。まず要素をおいて、徐々に最小限のガイドをひいて最終的に揃えるやり方をおすすめしたい。直感の部分も大切にしてほしい。
deliciousのアカウントをつくり、Webサイトのブックマークを集めよう
つぎに、やってほしいのが、ソーシャルブックマークサービスであるdelicious等のアカウントをつくってほしい。あとは、世界中のサイトをみて、直感でよいとおもったWebサイトをdeliciousに登録してゆく。その際、自分なりにデザインの分析してほしい。意図は何か、何が効いているのかなど。気になった書体を調べることも重要だ。それらのコメントをdeliciousのコメント欄にかいておく。まず、300サイトを目標にブックマークを集めてほしい。
この地道な努力が、のちにデザイン表現の引き出しのヒントになるだろう。
ツー・ダブリュー・ジーでは、毎日世界中のサイトを紹介しているので、参考にしてほしい。
デザイナーは素材をしる、素材を自在にあやつれるのが理想
紙のデザイナーは紙の勉強をする、紙によってインクののりかたが違ってくるし、厚み、質感によっても出来映えが違う。それらを考慮して、デザインをする。
Webデザイナーにとっての素材はピクセルだろう。スクリーン画面を素材にして、料理をするのがWebデザイナーだ。Illustratorで作っても、最後はラスタライズ(ベクターデータをラスターデーターに変換すること)され、最後は、ピクセルという素材になる。CSSも最後は、Webブラウザーがレンダリングをしてピクセル化される。アニメーションも結局は、静止画のピクセルを連続でみせたものだ。
つきつめてゆくと、ピクセルという素材にゆきつく。これがわかると、Webデザイナーの中には、通常のグラフィックデザインのスキルに加えて、プログラムやネットワークの勉強をする人がいるかが理解できるだろう。WebデザイナーとWebプログラマーを分けること自体がナンセンスなのだ。
日常の観察でもデザインのヒントの多くを学べる
私は、ある駅のなかにいるスタバによくいく。夜11時までやっていて、いついっても満席に近い。騒がしいので、読書や勉強にはまったくむかない。ところが、人間観察の場としては最適なお店である。会話などをきくには絶好の場である。女性2人組みの会話のほとんどは、恋の話しか、かたほうの仕事の愚痴を受け手がきくという会話のパターンが多い。
電車の中も、観察の宝庫である。本だったら何の本を読んでいるか、メールなどを打つ体の姿勢など、服装、仕事を推理したりなど、勉強になる。
デザインという単独の科目があるわけではない
デザインは、デザインという単独の科目があるわけではない。有名なバウハウスの円状のカリキュラムをみてほしい。
参考URL:
http://www.geocities.jp/gonzxxxxx/POPART/bauhausu.html
http://www.fl.reitaku-u.ac.jp/~yokuno/Semi/05/takahashi.htm
中心に建築があり、様々なカリキュラムが各レイヤーにわかれて構成されている。バウハウスでは踊りや簿記の授業もとりいれられていたことに注目してほしい。実際のバウハウスは想像以上に多様な学校だ。以前、上野の美術館でおこなわれたバウハウスの展示会にいった。各教授の個性の集まりで、一言でまとめるのは難しい。なぜか、その展示ではヨハネス・イッテンの展示がなかった。デッサンの授業も、カンディンスキーやクレーのおこなった授業を調べると、現在日本で行われているデッサン教育とは大きく違う。デザインは総合的で学際的なジャンルである。
建築とWebは共通点が多い。SD選書とバウハウス叢書を揃えよう
鹿島出版会のSD選書(建築の古典の理論書で有名)と、バウハウス叢書を揃えて、コツコツとデザインの理論書を読んでいくことをおすすめしたい。
建築とWebは共通点が多い。どちらも、ミックスドメディアであり、外身と中身がある点、ユーザー導線がある点、スキンと骨の両方を同時にみないといけない点など共通点をあげてゆくときりがない。
Webデザイナー向けのSD選書のおすすめ
Webデザイナー向けに、数点、SD選書のおすすめをかいておこう。ざっとタイトルだけをあげてゆく。
『建築家なしの建築』、『広場の造形』、『建築の多様性と対立性』、『様式の上にあれ』、『ルイス・カーン建築論集』、『コラージュ・シティ』、『建築をめざして』、『モデュロール』、『ラスベガス』、『建築について』、『建築とは何か』。
バウハウス叢書は数が少ないので、思い切ってすべて揃えてもよいとおもう。あえて1冊だけにしぼれば、カンディンスキー『点と線から面へ』だろうか。バウハウス叢書は過剰に高価だと思うので、図書館で借りたり、古本でもOKだ。
本棚は夢への実現装置
本棚をSD選書とバウハウス叢書でびっしり埋めることで、家族への説得ができる。だいたい、デザイナーを目指すというと、最初の抵抗は家族である。親の多くは反対するだろう。親は長く生き残れる人は少ないというのを経験的に知っているからでる。親の反対は当然だとおもう。でも、ある日、本棚にSD選書とバウハウス叢書がびっしり揃ってあり、本人が頑張って読んでいたら、親は驚き、あきらめるだろう。まあ好きにやってみなさいと、説教を断念して応援してくれるかもしれない。
本人も、毎日、その本棚をみることで夢への意識が全然かわるだろう。もう、やるしかない!と決意するだろう。この決意は独学では特に大事である。本棚は、本を置く場所ではない。なりたい夢への実現装置である。

まで。